トヨタの強さの秘密

読書会のお誘いを受けて題材に挙がっていた「トヨタの強さの秘密」を読了。ABDなる読書法だと担当分だけで良いらしいのだけど、なんかそれも気持ち悪いので結局は読みきる。

生産と開発を分けて考えるのが出発点で、「トヨタ生産方式」が世界中に普及し過ぎて差別化できない今や、強さの秘密は「トヨタ流製品開発」にあるそうな。
製品開発システムのアウトプットとして、その時代で確実に売れそうな設計情報が爆誕した場合に限り、生産システムが発動する。

この話の流れにはデジャヴ感があって、ゴールドラット先生の「ザ・ゴール」でも当初は生産管理の話だったのが、何作目かでは考え方を開発プロジェクトに拡張した「クリティカルチェーン」を提唱されている。
在庫を持つのが会計上は資産だけど、物が溢れる今や仕掛品を負債として考えるべきという根底にある考えも、トヨタのお話と重なる。どちらが元祖かはさて置き、自然な考えであることは分かった。


注目している側面の違い?

LEANもデザイン思考もアジャイルも元祖はトヨタだ!という大風呂敷に冒頭から期待値が高まる。私は中立的に「上手くやれたら元祖なんて何処でも良い」と思っているし、良し悪しを述べられる程の者でもないけれど、実際のところどうなんだろうか?

「強さの秘密」は、組織の構造(主査制度)と管理方法(TQM)であることが解き明かされる。スーパーマン的なタレントを持った主査を中核に据えることを知り、秘密でなくとも再現は出来ないじゃないかとも思う。マネできないから強みなのか。

設計情報創出の源泉となる「どうやって顧客ニーズに適合するのか?」という問いに対しては、「凄腕の主査が組織横断で顧客情報にアクセスするんだよ」くらいの記載しかなく、具体的にどんなユーザー調査するのかは答えが得られない。

「デザイン思考も元はトヨタ」なる節まで設けられているけれど、ユーザー調査に関しては少なくとも本書よりデザイン思考に頼る方が答えに辿り着く方法が得られる。本書が組織や仕組みに焦点を当てていて、デザイン思考は活動に焦点を当てているというような、重視している点の違いに思えた。


時代が変わっても対処できる強みなのか?

読み終えてみて感じるのは、トヨタ方式はそこそこ大きくなった製造業が既存ビジネスを維持することを目指した考え方なのではないかということ。
クルマを製造して売るように、現職も平たく言えばモノづくりで収益をあげているので、上手く取り入れると成功できるかもしれない。

一方で、モノを製造して売る時代でなくなったら対処できるのか?例えば、クリスアンダーソンさんが書籍「メーカーズ」で描く未来だと、設計情報は皆の共有財産になり、生産の役割は大企業から個人に移る。そんな未来で生き残るには、既存ビジネスに則った開発ではなく、新しい収益の仕組みを生み出して乗り換えないといけない。
他にも、フリーミアムといった新たなビジネスモデルが登場したり、ユーザーが別のユーザーにサービス提供するような複雑な構造になったり、新しい技術がもたらすプラットフォームを他社より先に構築する勝負だったり...。この本で述べられるのは、そんな未来でも通じる「強さの秘密」なんだろうか。

書籍は、海の向こうから来たLEANよりも、オリジナルを当たる意味でトヨタから学んだ方が直接的だという論調だった。でも、設計情報の創出ならまだしも、新規事業の開拓に特化するのであれば、やっぱりLEANの方がしっくり来る。
どっちが優れているという話と言うか、そもそも目指しているものが違うんじゃないかと思った。もしかするとトヨタ方式の中でカバーされているけれど紙面の都合で書けなかっただけ説も否めない。このあたりは判断保留としたい。


取り入れたい点もあった

中盤あたりで、基礎研究の良し悪しの評価基準を、商品開発から採用されたかどうかで測るという話があった。研究と開発の連携で悩んでいるようなメーカーにとっては、この仕組みを取り入れると上手く回せるようになるかもしれない。

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