いまこのARTが面白い!vol.1

神戸の写真教室「Nagy」による単発イベント「いまこのARTが面白い!vol.1」を聴講してきた。

会場は再度山の麓にある「海外移住と文化の交流センター」で、もともとは移民の学校だったのが、貸し会議室としても利用できる模様。

kiitoにしても然りで駅から遠いのは珠に傷だけど、神戸にはハイカラで価値ありげな建物が現役稼働している。

Nagyは写真教室と言っても、おそらく初心者に一眼レフの使い方を教えるタイプの教室ではなく、既にそこそこ出来る人が表現者として一人前を目指すレベル!?
そこに丸腰の素人として乱入する私の狙いは、クリエイティブ界隈の方のモノの捉え方に触れて、せめて意思疎通できるようになりたいということ。

正直なところ、美術館に足を運んでも良く分からないことの方が多いので、見る人はこんなところを見ているのか!という手解きは有難い。


比較によって共通点・違いを際立てる

5年おきの「ドクメンタ」と、2年おきの「ヴェネチア・ビエンナーレ」が重なったおかげで、両方が同時に楽しめるというスペシャルイヤー。そんなことも知らなかったレベルな私だったけれど、比較しての報告が伺えたことはとても良かった。

私は日本人ながら「日本人はどんな民族?」と聞かれてもうまく説明できない。でも、「日本人はアメリカ人と比べてどう違う?」であれば、まだ説明しやすい。
そんなところで、「ドクメンタ」と「ヴェネチア・ビエンナーレ」の比較で捉えられたところは、それぞれの理解にも役立ったし、現代美術の全貌を掴むのにも助けになった。

政治から芸術を取り戻すべくして始まった「ドクメンタ」は、美術祭全体で一貫した主張を打ち出すため、毎回キュレーターを置いてその趣向に合った作家を集める。そのため、リサーチに基づいた玄人好みの作品が多く、作品に対峙して説明を読み込みながら味わう。
他の都市に遅れを取ったヴェネチアが復興をかけて始まった「ヴェネチア・ビエンナーレ」は、商業的な色合いが濃く、売れっ子作家の作品を集める。そのため、見た目に「スゲェ!」という楽しみ方ができる。

共通項としては、現代アートの傾向がおぼろげに掴めた。単体の彫刻・写真・絵画だけの作品の枠を超えて、プロジェクターを駆使した映像作品、身体を張ったパフォーマンスというメディアを組み合わせた表現に向かっていること。こんな印象。


語彙が足りない問題

自分が美術館を観てピンと来ない原因の一つに、自分に沸いた感性を表現するためのボキャブラリーが足りない問題は大きいなと感じた。
少しカタカナは多いけれど、報告の中で出てきたのは「カタルシス(感情の解放)」「ナラティブ(物語性)」「インスタレーション」「馬鹿馬鹿しさ」「タブロー感」などなど。

辞書どおりの意味でなく、既存の作品群の特徴を現す場合もあるんだろうなぁと想像する。ヘヴィメタルで言うと、作品を聞き込んでいる人には「Djentなのにエモい」で通じるのが、特徴を言葉で説明しろと言われても、既に受け入れたことを改めて言葉にするのが難しいような。一種のラベリングになっているものを共有しとかないとついてゆけないことを学ぶ。


「面白い」のパターンを増やす

芸術祭の期間中、街中にうんざりするくらい溢れている作品群から「面白い」作品をピックアップして紹介するという報告形式だった。
現代美術作品の指標が「面白い」というのも新鮮ではあったけど、一言で「面白い」といっても様々な階層の面白さがあるように思えた。

具体的には...パッと観て感性に響く面白さ。語彙で言うと「カタルシス」「インスタレーション」あたり。ヴェネツィアに多そう。
作品に付いている説明を読み込んで分かる面白さ。現代美術が全体的に、説明を読んでメッセージを理解しなければ作品を楽しめない方向に向かっている。英語力が必要。
背景にあるコンテキストと対比する面白さ。これって歴史・地理・宗教といった知識を蓄えながら作品と対峙しなければ辿り着けない。
あと、作品と対峙した自分に沸いた感情や、捉え方の変化に関するの面白さなんてのもありそう。

どれが優れているという類のものでなく、作品に対峙した時に限定される話でもなく、普段からたくさんの面白いものに囲まれている方が、人生は面白いじゃないかと思う。面白いものを生み出すにも、面白さに気付く感度を高めないといけない。
そういう意味で、いろんな面白さを享受できるような下地として、豊かな感性を持つことも重要だし、歴史・地理・宗教に精通していると面白さに気付く可能性が高まる。

教養は面白いことに気付くヒントが詰まっているのに、残念ながら私は一般教養をすっ飛ばして専門知識を詰め込んでしまった。子供から「どうして勉強しないといけないの?」と聞かれたら迷わず「人生を面白くするため」だと答えたい。

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