シリアルイノベーター

HCD-Netフォーラムでお話を聞いて以来、気になっていた「シリアルイノベーター」読了。
副題「非シリコンバレー型」のとおり、スタートアップ企業ではなく、成熟した大企業で起こるブレイクスルーイノベーションを事例研究したもの。

研究によると、大企業で起こるブレイクスルーイノベーションは、「シリアルイノベーター」なる特定の人が繰り返し起こすらしい。シリアルイノベーターは、組織の縦割りを越えて顧客の課題特定から技術開発、商品開発を経て、市場導入までを自分でやらねば気が済まない性分を持つそうな。

書籍としては、技術主導型と顧客ニーズ主導型の優劣を付けないニュートラルな立場を取る。事例に出てくる技術者は、顧客と向き合ってHCDっぽいことを実践し、実現のための社内政治も自分の役目なんだと気付いて躍進してゆく。理想の技術者像について迷走気味な私に、目指すべき技術者像を与えてくれる気がしてきた。


一方で、目指してシリアルイノベーターになれるものでもない事も分かる。映画マトリクスの救世主みたいな「選ばれし者」思想が強く、資質も努力も周囲のサポートも無ければ開花しない。もし私がシリアルイノベーターだとすれば、逆算して入社10年目くらいに頭角を現していないと遅い。逆に、シリアルイノベーターになれなくとも、既存事業を育て上げる役割だって組織には必要だ。

我々の組織は改善タイプの段階的イノベーションが得意で、既にある「金のなる木」であと何年かは持つかもしれない。でも、私が退職する30年後まで組織が続くかと思うと、ブレイクスルーを連発するシリアルイノベーターの出現を願う事は健全なことだろう。

自分の組織は、開発にいながら企画に進言したり、顧客に会ったり、発売後も顧客と長く関係を保てたりする点で、シリアルイノベーターにとって恵まれている。一方で、半年単位で成果を求めることは、課題特定に長期間を要するブレイクスルーイノベーションを阻害するかもしれない。退職まで組織が続くためにも、まだ見ぬシリアルイノベーターのため、何か土壌づくりに貢献したいなぁと思う。

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