イノベーションのジレンマ
破壊的イノベーションを理解しなおす
製品の性能を高める「持続的イノベーション」を追及するのは一見すると合理的なんだけど、価値基準が異なる「破壊的イノベーション」に足元すくわれるよ!という主題を事例から導く内容。書籍を通して重要さが解かれる「破壊的イノベーション」について、これまで勘違いしていたことが分かった。具体的には、後から攻めてくる新技術のS字カーブにキャッチアップしないと下から抜かされる意味で、下図の概念だと思っていた。
でも、↑これは「持続的イノベーション」の説明であり、技術者の見極めにより技術革新にキャッチアップするのはそれほど難しくないんだとか。
そうではなく、下図のような新たな用途の価値基準を登場させなければ「破壊的イノベーション」について説明できない。
顧客満足に対するアンチテーゼ
なぜ「破壊的イノベーション」にキャッチアップできないのか?に対する答えが、元の価値基準についてきてくれる既存顧客の意見を聞き過ぎてしまうというもの。確かに、マーケットが不明確な新規顧客よりは、差し迫って目の前にいる顧客の意見を聞いてしまいそう。我々が盲信してきた「顧客の意見を聞いて顧客満足を高めよう」に対するアンチテーゼになっている意味で、先日学んだ競争としてのサービスとも違い、技術革新の時間という視点を与えてくれた。
イノベーションの3要素に当てはめる
イノベーションと言えば、Business/Technology/Creative(Customer?)の三要素を思い出す。昨今では、個々の専門性を研ぎ澄ますだけでなく、それぞれの要素を越境するのがトレンドという感じがする。例えば、「ビジネスモデルキャンバス」は、左にBusinessで右にCustomerを据える。「デザイン・イノベーションの振り子」はTechnologyとCreativeの間を往復する。
今回読んだ「イノベーションのジレンマ」はTechnologyとBusinessを橋渡しするお話だと思いきや、Technologyの革新についてゆけずBusinessに負ける説明として、Customerが登場するのが面白い。
破壊的イノベーションで勝つには、既存用途で測れば劣ってしまう未熟な技術を「誰のところに持って行けば活かせるか?」と発想できるかが鍵になる。これって、UXデザインの出番ではないか。
部品メーカーの中にいる人は手持ちの技術を役立てなければならない制約があるけれど、私にはそのような制約が無く、役立つかは後回しで世間の新技術を拾い集めてストックし、プリコラージュのようにあてがってサービスを作ることができる。
だったら自分が飛び込むのか?
意識高くなったところで、「今日から破壊的イノベーションに取り組みます!」と言ったら、周囲から「何言ってんだコイツは?」と返されるだろう。現実問題として、2×2の四分割表で考えてみると確度の低さが目に付いてくる。確かに、書籍の中では破壊的技術で成功した例(表の左上)と、既存技術にしがみついて敗れた例(表の右下)が豊富に紹介されているけれど、その他はどうなのよ?
技術革新を示すS字カーブが比較的大きく、まだユーザー要求を充足できていない業界にいると、「破壊的技術の重要性は分かったけど、今じゃなくても良いよね?」という反論を受けるだろう(表の左下)。
また、破壊的技術に挑戦したけど上手くいかず消えていった企業(表の右上)も、表舞台に出てこないだけで星の数ほど隠れているんだろう。自分が挑戦したところで、家族を路頭に迷わせる可能性は高い。
そんな堅実さが「健全な企業ほど敗北する」所以でもあるので、何とかしなければならない。成功するか不確実な破壊的技術に対して、少しでも確度を高めるようなことは求められていて、それがUXD/HCDということで話を〆る。
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