初心者向けUX/サービスデザイン概論

概論がもたらす変化

昨年は受講者として概論セミナーを聞いていたし、2017年2月のイベントでも概論のお話をされていたので、UXデザイン概論のお話を聞く機会は多い。
それでも概論チケットはおかげさまで満員御礼だし、何度聞いても発見があるなぁと感じる。内容が膨大すぎて拾いきれなかった話題でも、次に聞くと一年のワークショップでの悔しい想い出と結びついて、同じ話題なのに自分の中の引っかかり方が違う。

そんな気持ちで今回の概論を聞き始めると見事に裏切られた。今回はIoT/AIの話題のウェイトが多くて、新しいトピックに「おぉッ!」と思った。なるほど。時代がめまぐるしく変化しているのだから、UXデザインセミナーの内容も進化して当然なのか。
その中でも、今回はCUI→GUI→NUIの話題が引っかかった。それは、過去にジェスチャー操作デバイスを片っ端から評価していた個人的な事情も関係しているかもしれない。

そうそう。自分に関係する事は印象に残る。私の体験だと、自分が子育するようになると、それまで意識したこと無かったのに「街行く人に子供連れが多いな」と目に付き、使ってる育児グッズに目が行き、いつしか詳しくなる。
初めて聞く人にとっての概論のセミナーの役割は、日々の生活中にUXデザインに関するトピックに出会ったとき、自分に関係する事として引っかかるよう変化させることだったのか。

ええ感じに空気を読むNUI

NUIに話を戻すと、触りたくない特殊な事情があって、過去にジェスチャー操作の実現可能性を検討していたことがあった。今回の講義を聞いて、それはNUIじゃないと分かった。
ユーザーの世界において、CUIでは操作する人がコマンドを記憶しないと使えなかったのが、GUIでは操作者がわざわざ記憶しなくても使えるようになったから進化なのだ。
そこに来て、GUIをジェスチャー操作に置き換える発想だと、GUIで出来る膨大な機能がジェスチャーに対応させきれず、操作者がジェスチャー操作方法を学習しないといけない事態に陥ってしまう。もはやCUIへの退化だ。



そうじゃない。NUIでは人工物が人間をセンシングしてええ感じに空気を読んで振舞うことで、「操作する」という概念の無い世界まで進化させるものなんだ。この「ええ感じに空気を読んで」の部分は、パターン照合が得意な人工知能が貢献しそうだけど、それだけでは人を幸せにはできない。
定量調査は人工知能に置き換わったとしても、ユーザーが渋々とった行動も学習してしまい、データだけでは真実が分からない。ヒトがどういう文脈でどういう行動をするのか、そのときの気持ちはどうなのか、これを解き明かすのにUXリサーチが必要になる。

なるほど!今まで自分は「NUIデバイス」みたいなモノ単品で捉えがちだったけれど、そうではなくIoT/AI/UXデザインを継ぎ目なく俯瞰して捉えないといけなかったんだ。
従来の技術者は「センシング」「ネットワーク」「データマイニング」のような縦割で専門性を高めてきた。これがIoTの開発になると、人をセンシングする組込み機器がネットワークに繋がってデータ解析するもんだから、技術者としてもオールラウンダーでなければならない。その上、デザインプロセスを回すスピード感の中で具現化しないといけない。
難易度の高そうではあるけれど、少なからずUXデザインの話が通じる技術者であることのアドバンテージがありそうな希望がわいてきた。

プラットフォームで勝つ

メーカーの中にいて「あたりまえ品質ではなく期待を超えるモノをつくろう!」と言うと、「実現しても真似され、いずれ当たり前になるよね?」と反論いただく。そりゃそうだ。もともと期待を超える「モノ」の世界で戦うことに限界があったんだ。
ビジネスに成功している大きな企業は、期待を超えるアドバンテージが得られる賞味期限内にプラットフォームを支配してしまい、プラットフォームにぶら下がるモノを補完財にしてしまう。補完財をコモディティー化させることで、プラットフォームが独り勝ちするのもセオリーどおりだ。

自社は「分析機器版のKOMTRAX」と呼ばれるようなシステムを持っていて、データが怪しくなる予兆を捉えて壊れる前にサービスが修理しに来る。次の一手は何だろうなと妄想する。
教えに従って「競合の立場に立って何をされたら痛いか?」で発想すると、自社製だけで閉じているプラットフォームの送信データをハックして、メーカーの垣根を取り払ったオープンプラットフォームが出来たら脅威かな。分析結果を(装置の使用者ではなく)エンドユーザーの持ち物に解放してしまう。
いや、そんなことをすると今あるアドバンテージを壊すことになるからナシだな。思いを馳せながら、イノベーションのジレンマにも気付いた。

関西らしいライトニングトーク

今回、初めての試みとして昨年度受講者にLT(ライトニングトーク)登壇していただいた。先生の後で話すのは恐縮過ぎると言っておられたけれど、ワークショップ中から我こそはと前に出て発表してくださる主要メンバーだけあってお上手だった。時間厳守ぶりも連続セミナー仕込み。

「実務で役に立つの?」「関係ない業種だけどついていける?」「通年セミナーってどんなイメージなの?」という初学者の疑問に答えるような内容を話してくださった。ゴリ押しのステマと違って、実際の苦労話も交えて生の声で伝えていただくところにUX KANSAI愛を感じた。

UXデザインと言うとWeb関係やデザイナーの方が取り組むイメージがあるところ、あえて外したかのように教育関係者、メーカー技術者、工務店社長が登壇する。そんな多様なところが関西のコミュニティとして面白いところだし、ノンデザイナーが当たり前のようにデザインをするという時代の流れに沿っているとも言える。



コミュニティという側面からしても意義あるなぁと思うのは、「運営」「受講者」みたいな分け方でなく、距離の近い先輩が初学者を後押ししたり、同志に悩みを打ち明けたりできること。自然に回ってゆくようなコミュニティに育てば素敵だと思うので、微力ながら力添えしてゆきたい。

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